大阪高等裁判所 昭和63年(ネ)2128号 判決
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
第一申立て
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、控訴人に対し、金七二万五六三八円を支払え。
3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文同旨
第二主張
当事者双方の主張は、次に付加するほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する(ただし、原判決四枚目表九行目の「労働基準法」の前に「昭和六二年規則改正により削除前の」を加え、同裏一〇行目の「可能でなく、」の次に「前記」を加える。)。
(控訴人の主張)
本件において控訴人の主張する所定時間外労働は、被控訴人が控訴人に対して命じたものであり、控訴人の申出によつてなされたものではなく、しかも当時被控訴人には労使間に三六協定が存在しなかったので、右所定時間外労働は違法であった。そして、就業規則がかかる違法な所定時間外労働を前提しているはずはなく、右労働に就業規則を適用することはできないので、労働基準法三七条のみが必然的に適用されることになる。
第三証拠
本件記録中の原審及び当審の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 当裁判所も、控訴人の被控訴人に対する本訴請求は、失当として棄却すべきものと判断する。その理由は、次に訂正、付加するほか、原判決の理由説示と同一であるから、これを引用する。
1 原判決五枚目裏四行目冒頭に「そこで、被控訴人の支払ったセールス手当が所定時間外労働に対する対価の趣旨で支払われたものか否かについて検討するに、当審における控訴人本人尋問の結果、」を加え、同五行目の「三号証」を「第三号証、成立に争いのない甲第一六号証の一、二、乙第八、第九号証並びに弁論の全趣旨」と改め、同九行目の「セールスマン」の前に「親会社であるa株式会社から送付された原案を基にして、」を加え、同一一行目の「基に」を「参考にして」と改め、同行の「定めたこと、」の次に「被控訴人は、従業員に対しこれまで一貫して、所定時間外労働に対する賃金はセールス手当として支払っていると説明してきたこと、」を加える。
2 同六枚目表一行目の「が認められ」から同六行目の「認められる。」までを「、昭和五八年四月二一日からは、セールスマンの深夜労働(ただし、一時間単位)に対して深夜勤務手当を支給することになったことが認められる。右事実によれば、被控訴人は、労働時間を正確には把握しがたいセールスマンの勤務形態の特殊性に応じて、休日・深夜労働(ただし、一時間単位)を除く所定時間外労働に対する割増賃金の支払に代え、右労働に対する対価として定額のセールス手当を支給することとし、その旨給与規則に記載し、従業員にも説明して、現に被控訴人のセールスマンに支給しているものと認められるので、被控訴人が控訴人に対して支払ったセールス手当も右所定時間外労働に対する対価の趣旨で支払われたものと認められる。なお、成立に争いのない乙第六号証、甲第一一号証、原審証人Bの証言によると、被控訴人の内規である時間外勤務実施要綱の4(1)(ロ)(注)には、外出先等社外での勤務に対しては(昭和六二年規則改正により削除前の)労働基準法施行規則第二二条が全面的に適用されるとされており、一見すると、セールスマンには原則として所定時間外の実労働に対する対価は支給しないとされているかのようにも取られかねない(被控訴人は本訴においてその旨の主張もしている。)が、被控訴人はセールスマンが現実に行った休日・深夜労働に対して休日・深夜労働勤務手当を支給し、右労働を除く所定時間外労働に対する対価として定額のセールス手当を支給していることは前記認定のとおりであって、右要綱は(文言は正確ではないと考えられるが)被控訴人のこの取扱いを前提として休日・深夜労働の実行手続について規定しているものと考えるのが自然であり(右要綱には先の記述に続いて、指示したり行ったことが明確である場合にのみ時間外労働として取り扱う等の記載がある。)、右要綱の存在は前記認定の妨げとなるものではない。また、」と、同九行目の「証言」を「供述」とそれぞれ改める。
3 同六枚目裏一行目の「三七条は」の次に「、労働時間制の原則の維持を図るとともに、過重な労働に対する労働者への補償を行おうとする趣旨から、」を、同八行目の「場合には、」の次に「同法三七条所定の最低基準に基づき」を、同九行目の「できる」の次に「ものと解される」を、同一〇行目の「給与規則では、」の次に「月給制をとつており、」をそれぞれ加える。
4 同八枚目表一行目の「号証の一」の次に「の一〇月六日の日付欄」を、同行の「副う」の次に「かのような」を加え、同五行目の「「その日は」を「一〇月六日の日付欄に「同月九日は」と改め、同七行目の「裏付ける」の次に「確実な」を、同末行の「原告本人」の前に「原審における」をそれぞれ加える。
5 同八枚目裏九行目及び同末行の「原告本人」の前にいずれも「原審における」を加える。
6 同九枚目表一行目の「自己の発言内容を」を「当日の勉強会会場に来た控訴人の上司であるC課長を会場から追い出したことを」と改め、同二行目の「口論となったため」の次に「二〇時よりも」を加え、同三行目の「原告」から同四行目の「ならない」までを「、労働するために使用者の指揮監督のもとにあった時間に該当するか否かには疑問がある」と改め、同五行目の「原告本人」の前に「原審・当審における」を加え、同八行目の「と認められる」から同九行目の「三〇分」までを「が、二一時」と、同行の「があることも」を「もあることが」と、同一〇行目の「一九時三〇分」を「当日二一時」とそれぞれ改める。
二 控訴人は、当時被控訴人には三六協定が存在せず控訴人主張の所定時間外労働は違法であり、違法な所定時間外労働には就業規則を適用することはできないので、右所定時間外労働には労働基準法三七条のみが必然的に適用されることになると主張するが、仮に被控訴人に当時三六協定が存在せずその意味で被控訴人の指示に基づく違法な所定時間外労働が行われたとしても、前に判示した同法三七条の趣旨に照らして、同条所定の計算方法による割増賃金の支払に代えて同金額以上の一定額の金員の支払を義務付けている就業規則を適用して右金員を支払った場合に、なお同法三七条所定の金員を支払うべきものとは到底解することができないので、控訴人の主張は失当である。
三 以上によれば、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 舟本信光 裁判官 井上清 裁判官 坂本倫城)